アメリカ海兵隊はハワイ・カネオヘ空港へのMV22オスプレイ配備のために、ハワイ島のウポル空港、モロカイ島のカラウパパ空港での離着陸訓練を計画、環境アセスメントを進めてきたました。しかし周辺住民や他の省庁からの反対意見があり、両空港での訓練計画を取り下げました。
モロカイ島のカラウパパ空港は国立公園に近く、遺跡や動植物に影響が出ることを懸念。ハワイ島のウポル空港では、空港周辺の騒音被害を懸念する意見が相次いだためです。米軍普天間飛行場配備のために実施した環境審査や、高江では、地元や住民の意見を聞く機会も環境、歴史的、文化的遺産への配慮も、まったくなく、米国内への配備手続きとは雲泥の差です。
こちらが、配備計画が中止されたハワイの空港です。いいとこですね。ほとんど人家もなく、牧場や風車発電が広がっています。「住民の意見」は、かなり広い範囲からよせられたのでしょう。
カラウパパ空港を大きな地図で見る
ウポル空港を大きな地図で見る
おなじ縮尺で、高江、伊江島を並べてみます。更に配備が予定されているカネオヘ基地と普天間基地、辺野古の計画を並べます。沖縄の人間、環境、文化の値段は随分安い。
沖縄では飛行エリア、訓練エリアは住宅、国道、学校、公民館、また水源地をかすめるように縦横無尽に張り巡らされています。「住宅の上を低空で飛ばない」なんて、あり得ないですね。
また現在の運行状況からも分かるように、普天間から市街地をとおり、読谷をかすめて伊江島へ、また沖縄市、うるま、金武、宜野座をとおって、辺野古、高江の訓練地に向かいます。現地では、住宅地、通学路の上を一日何十回も飛び回るのが沖縄の状況です。
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上記のオスプレイパッド周辺に沖縄島北部にしかいない絶滅危惧IA類(CR)ノグチゲラ(天然記念物)が棲息、沖縄県では保護地区に無断立ち入りや周辺で騒音を出すなどの行為に対する罰則を盛り込んだ「ノグチゲラ保護条例」が制定されています。また同じく絶滅危惧IA類(CR)ヤンバルクイナの現在の南限でもあり、ここでの繁殖が阻害されることは、種としての回復を大きく阻害することになります。
伊江島滑走路周辺(米軍滑走路は左側)を大きな地図で見る
こちらは24機が配備予定のマウイ島のカネオヘ基地です。周囲に住宅があるように見えますが、すべてが海兵隊基地です。飛行時間の協定なども地域と取り交わされ、沖縄とは随分違うようです。危険ゾーンへの住宅なども回避され、飛行ルートも確立しています。
カネオヘ基地を大きな地図で見る
普天間基地、基地自体が文化財、人家を住人を収容所にとじこめた上で潰してつくられています。飛行エリアの範囲に何万人もの人々、幾百もの文化財が常時危険に晒されています。
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こちらも、ルート設定は人家の上を通過するほかなく、防衛省の示した飛行ルートなど海兵隊は一切守ることはありません。また伊江島への飛行ルート上には名護市街地が広がり、より多くの被害の広がりが予想されます。もちろん、こちらも沖縄で最も古い集落跡など多くの貴重な文化財が眠っていますし、何よりも貴重なサンゴ礁、リーフ、ジュゴンの生息地です。
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米海兵隊は18年までに、ハワイのカネオヘ基地にオスプレイ24機を配備する計画。これに先立ち、米海軍省は10年8月から国家環境政策法などに基づき、環境影響評価(アセスメント)を実施しました。防衛省がこの報告書の都合のいい部分だけ抜けだし、説明等に使ってきましたが、かえって対応の日本と米国における差が明確になってきました。米国では今年6月、ニューメキシコ州のキャノン空軍基地に所属するCV22オスプレイの低空飛行訓練も、環境アセスに対する住民意見を受けて延期されています。
米海兵隊は普天間へのオスプレイ配備に向け、環境審査結果を公表。両空港で取り下げられたのと同種の着陸訓練を計画していることを明記し「環境への重大な影響はない」と結論付けたが、同環境審査には住民意見を募る手続きはなく、これまでも地域との飛行や環境に関する協定を拒否し続けている。
オスプレイが「危険」だから反対なんじゃない(十分危ないけど)。いまも侵害されている沖縄の人権・環境・平和が、更に広範囲に未来にまで侵され続けることが問題なんだ。